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前回に引き続き、著作権保護法案「Stop Online Piracy Act (SOPA)」について、取り上げたいと思います。今回は、SOPAの危険性や可決された場合の最悪のシナリオについて、あくまで個人的見解を述べさせていただきます。
SOPA法案の詳細については:
2.「SOPAがビジネス界に与える影響: あなたは賛成派or反対派?」
をご覧ください。
前回も触れましたが、筆者個人としては、SOPAには大反対です。その理由は、いくつかあります。
理由①:
まずSOPAは原案のままだと、ネットビジネスの世界において競争相手を陥れるための恐ろしい武器になりえるというポイントです。その方法は単純で、著作権侵害の疑いのあるコンテンツ(「著作権を侵害したコンテンツ」ではなく、あくまで“疑い”があるだけ…)を、相手サイトに掴ませるだけで事が足ります。これでは、競争ではなく足の引っ張り合いが起こるだけであって、本当に“イノベーション”は死んでしまいます。
理由②:
次に納得がいかない点は、SOPA推進派がインターネットの仕組みを十分に理解できていないどころか、当の議会さえも法案の内容が複雑すぎて、何を扱っているのかよく理解していないというところです。年齢層が50~70代で、ほとんどネットの知識がないような議員たちが、“過去50年間で最も偉大な発明”ともいえるインターネットの未来について議論し、ルールを決めようとする姿には危機感を覚えます。これではまるで、サッカーのど素人にワールドカップ決勝トーナメントの審判をさせているようなものです。
理由③:
そして、最も腑に落ちないのは、これほど反対意見が多い法案を、なぜ米議会は推し進めようとしているのかという点です。おそらく、世論の90%は反対しているのではないかと思います。これでは、権力による「完全な情報の検閲(Total Censorship)」を実現しようとしているのではないかとさえ考えてしまいます。
最悪のシナリオ
SOPA法案の恐ろしいところは、私達が日常的に行っている何気ない投稿や共有が違法行為になりうるということです。
例えば、「CNN.co.jp」で宇宙旅行に関する興味深いニュースをみつけ、友だちに知らせようと思いFacebookでリンクを共有したとします。SOPAの定義では、これだけで著作権を侵害したとみなされてしまいます。
また、4歳になる最愛の娘が、テレビの前で大好きなアニメ主題歌に合わせて踊っている姿を撮影し、それがあまりにも可愛すぎたので、YouTubeに投稿したとします。これもアニメに対する著作権侵害とみなされ、投稿者やホストサイト(この場合YouTube)がトラブルに巻き込まれる可能性が出てきます。
どちらの例でも、悪意は微塵もなく、著作権を侵害したという意識さえありません。しかし、こういった何気ない行為が訴訟につながり、最悪の場合、サイトの閉鎖という事態を招くかも知れません。このようなリスクが付きまとう状況下では、インターネットの情報流通は激減してしまい、再びマスメディア、マスマーケティング主導の「一方的な情報供給」、すなわち「閉ざされた世界」へと後戻りしてしまう可能性もあります。
これは、あまり議論されていないポイントですが、最近オバマ大統領が言及した報告書では、インターネットは年間約2兆ドルを米国GDPにもたらしているとあります。さらにインターネット・データセンター(IDC)は、今後4年間で、IT業界は700万の雇用と10万の新規企業を生み出すだろうと予想しています。SOPA法案が可決されることで、この経済効果が促進するとはどうしても思えません。
今後もSOPAに関する議論は、さらに激化していきそうです。
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