SOPAがビジネス界に与える影響、 あなたは賛成派or反対派?

どっちを選ぶ?

前回に引き続き、アメリカで問題となっている著作権保護法案「Stop Online Piracy Act (SOPA)」について取り上げたいと思います。12月16日、米下院法務委員会は、SOPAに対する決議を保留することに決定しました。インターネットの世界を一変してしまうかも知れない同法案への決議投票は、2012年の米議会再開まで持ち越されるようです。

SOPAとはどのような法案なのか、簡単にまとめると:

  著作権を無断使用などの海賊行為から保護するための法案

SOPAが可決されると:

  1. 著作権保持者は、コンテンツを無断で使用した疑いのあるWebサイトやサービスに対し、訴訟を起こすことができるようになる。
  2. 米政府は、不正サイトへサービスを提供する検索エンジンやISP(プロバイダー)、決済サイトなどに対し、サービスの遮断を強制的に命じることができるようになる。
  3. 著作権物の無断使用は、重罪とみなされるようになる。

※詳しくは、「どうなる、インターネットの未来: SOPAとは?」をご覧ください。

以上を踏まえた上で、今回は推進派、反対派、それぞれの主張を比較し、この法案がビジネスの世界や私達の日常生活にどのような影響を与えるのか、詳しく検証していきたいと思います。

ちなみに、私は反対派です。よって少し偏った見方になっているかもしれません。とにかく、SOPAはアメリカ合衆国内に適応される法律ですが、日本にもその影響が及ぶことは間違いありません。

まずは、推進派の主張から…


推進派の主張

推進派の主な顔ぶれは、National Broadcasting Company (NBC)やアメリカ映画協会、アメリカレコード協会などのコンテンツ提供者です。彼らの主張では、

SOPAの目的は、制作者(企業)の利益を守ることであり、同時に国内の雇用を守ることだ。経済が不安定な現状を考慮すると、なおさら必要不可欠である

として、SOPAの正当性を訴えています。目的はあくまでも、海賊行為を阻止することで、雇用の安定や経済の回復を図ることのようです。

NBCは9月、他の推進派350社と共に、オンラインにおける著作権保護法の成立を訴える旨の書簡を政府に提出しています。書簡には、約100の不正サイト(アメリカの企業や個人に属する著作権を不正に使用したと思われるサイト)を対象行った調査結果が記されており、

「不正サイトは、海賊行為により年間合計で530億件のアクセスを稼いでいる。さらに、2010年度の違法業者による偽造品の世界的な売り上げは、1350億ドルにも達した。これらは、アメリカの雇用を盗むものであり、アメリカの富を盗むに等しい行為だ」

とあります。海外サイトの海賊行為によりトラフィックが奪われることで、アメリカ国内の雇用が脅かされているという主張です。

中には、「アメリカの著作権を守るだけでなく、コンテンツは保護されていると回りに認識させることで、それぞれの国が独自のコンテンツを生み出すきっかけとなるだろう」と少し的の外れた主張をするグループもいます。米議会の中にも推進派が多く、「SOPA反対派が必死に反対する理由は、実際に著作権侵害によって利益をえているからだ」と疑いの目を向けるものもあります。

反対派の主張

多くのシリコンバレー大手企業は、公の場でSOPA法案への懸念を明らかにしました。GoogleやFacebook、Twitter 、その他の名立たるネット企業は、共同で反SOPA団体「NetCoalition」を組織するなどして、強硬な反対姿勢を見せつけています。さらに、PayPal、Yahoo、eBay、Netscapeなどのネット古参も、『New York Times』紙の広告欄1ページを使い、共同声明としてSOPAへの反対意見を述べました。

このように、反対派は大規模な活動を繰り広げていますが、海賊サイト撲滅については異論はないはずです。一体、反対派がこれほどまでに危惧する理由とはなんなのか?それは、SOPAにより「自由権」と「イノベーション」が損なわれる可能性があるということです。

SOPAが可決された場合、米当局はインターネットに関して絶大的な権力を持つことになります。例えば、著作権侵害の“疑い”のあるコンテンツへのアクセスをブロックするようISPに命じたり、YouTubeやGoogle検索などに不正コンテンツの削除を命じたりできるようになります。さらに重要なポイントは、著作権侵害の“疑い”のあるコンテンツを一部掲載するサイトまでもが、規制の対象になるというところです。これにより、YouTubeやYahoo、Google、Facebookなどの健全なサイトさえも、閉鎖の危機にさらされることになります。

シリコンバレー勢は、こういった自由権の侵害を懸念しています。Googleの会長エリック・シュミット氏は、SOPAに対し「苛酷過ぎる」と評し、中国やイランのネット規制となんら変わらないと批判しています。

一方で企業家たちは、テクノロジーの発展を妨げる可能性があるとして不安の念を抱いています。SOPA法案が成立し、著作権に関する訴訟が横行するようになれば、当然のことながら企業の成長は妨げられます。成長どころか閉鎖される可能性だってあるわけです。そうすると、ネット企業への投資リスクは高まり、投資家たちは二の足を踏むようになります。結果として、ベンチャー企業は資金調達が難しくなり、クリエイティブなアイデアが育たなくなるかもしれません。

ニュース共有サイト「Reddit.com」の創設者、Alexis Ohanian氏は、

「もしSOPAのような法律がReddit設立当初に存在していたならば、われわれのビジネスはローンチさえも実現できていなかっただろう」

と指摘しています。 同氏は、SOPAの厳しすぎる規制が原因で、次世代のイノベーションが損なわれるのではないかと懸念しているようです。

何はともあれ、両強硬派が最も考慮するところは、それぞれの利益かもしれません。次回は、SOPA法案の危険性とそれが私達の生活に与える影響、そして法案可決が招く最悪のシナリオについて触れていきたいと思います。

次の記事→ SOPAその3: 「SOPAの危険性、インターネットの終焉?

関連記事:

SOPA記事その1: 「どうなる、インターネットの未来: SOPAとは?

SOPA記事その3: 「SOPAの危険性、インターネットの終焉?

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