「ハイジャックされた飛行機の乗客だったんだけど、地獄だったよ。何でも聞いて!!」
先日そんなインパクト大のスレッドが海外掲示板「Reddit」に立てられ、話題となっていた。スレ主がハイジャックに遭ったのは、17日のアジスアベバ発ローマ行のエチオピア航空旅客機:
エチオピアのアディスアベバ(Addis Ababa)からイタリア・ローマ(Rome)に向かっていたエチオピア航空旅客機が17日、ハイジャックされ、スイス・ジュネーブ(Geneva)の空港に緊急着陸した。ハイジャック犯は既に逮捕され、乗員乗客は無事。空港当局によると、犯行に及んだのは副操縦士だという。
– via Yahoo!ニュース
スレ主は証拠として荷札の写真を投稿すると共に、ニュースではあまり報道されなかった乗客目線の貴重な体験談を共有した。
▼証拠写真via imgur.com
<以下、スレ主の体験談>
※ ※ ※
ET702便の乗り継ぎでアディスアベバにいた25歳の男です。搭乗して1時間後に航空機がハイジャックされました。
飛行機に乗った後、私は自分の席につきました。エコノミークラス、右翼付近の窓側の席です。時刻は午前0時ごろで、離陸中にさっそく眠りにつきました。
それから1時間後、酸素マスクが飛び出す音で目が覚めました。「一体何事だ…」と思い辺りをキョロキョロ。隣の席の女性も私と同じく困惑していました。飛行機がおかしな動きをしていたわけではなかったので、ささいな技術的問題か、誰かが間違えてボタンを押したのだろうと考えました。
すると突然、怒ったような野太い声が機内放送で流れました:
「着席してマスクを装着せよ。これから酸素を切る」
…と立て続けに3回。この時点で、私はただならぬ状況に置かれているのだと気付きました。誰かがコックピットに侵入し、飛行機をハイジャックしたのだと。
間もなく機内の酸素が薄くなりました。私ははげしいめまいを感じたので、他の乗客と同じように酸素マスクを装着することにしました。その直後、突然飛行機が8秒ほど急下降し、すぐに急上昇して、何とか持ち直しました。 周りの乗客は泣き叫び、手を合わせています。私も完全にパニック状態でした。
私たちは情報を待ちましたが、いつまでたっても何もわかりません。唯一わかっているのは、ハイジャック犯がこの飛行機を支配しているということだけ。そんな状態で、私たちは6時間ほど飛行を続けたのです。
一体犯人は誰で、何が目的なのか…。余計な考えが頭を巡ります。
「恐らく犯人は単独犯…、ならばどこかの空港に着陸しようとは考えていないはず。そんなことをすれば、すぐに捕まってしまうからだ」
そこで私は無事に着陸できるかもしれないという期待を捨て去りました。窓の外に目をやると、視界に入るのは暗闇だけ。上も下も真っ暗闇。
それから6時間、私はこの事態がどんな終わりを迎えるのか、あらゆる想像を巡らせました。「突然海に墜落するのか、ビルに突っ込むのか、他の飛行機と衝突するのか、それとも着陸した後に殺されるのか…」
家族や恋人にメールを送ろうとしていたのを覚えています。他のテロリストに見つかって撃たれるのではないかと怯えながら、充電残り5%の携帯電話で、<飛行機で問題が起きた。愛してるよ。本当にありがとう>とタイプしました。しかし電波が入っていなかったため、私は携帯の電源を切り、墜落する直前にもう一度試してみようと考えました。そうすればメッセージが送れるかもしれません。
私は隣の人とずっと手を握り合っていました。何もわからない…、もうすぐ死んでしまう…、そう考えながら過ごした6時間は1秒1秒が精神的な拷問でした。私は泣き崩れ、すべてを諦め、さよならを告げ、家族のことや昔のことを想いました。
目的地ローマへの到着予定時刻は午前4時30分。すでに午前5時半をまわっていましたが、私の乗った飛行機は未だに空高く飛び続けています。窓の外には、遠くの海岸線と街の灯り。その景色がなぜか私を安心させました。
5時45分ごろ、突然飛行機は旋回を始めました。右に回って、左に回って…。恐らく20回くらいは旋回を繰り返したはずです。私は、犯人が燃料を使い切って、飛行機を停止させようとしているのだろうと思いました。飛行機はまだ同じ高度で、陸の方には向かっていません。
ひどく長い時間旋回を繰り返した後、飛行機は通常速度で陸地に向かって下降を始めました。雲の高度まで達すると、通常着陸のように翼のフラップが開きました。それでも私は、墜落時のダメージを最大にするための操作だろうと悲観視しました。
「もうおしまいだ。何かに衝突するんだ…」、私はそう考えていました。窓の外を見下ろすと、光が2つ、3つ、前方は見えません。あたりはまだ暗い。気がつけば、速いスピードで住宅街の上を飛んでいます。
そして突然、私たちの真下に空港が現れました。この瞬間のことを考えるだけで、今でも体が震えます。我々は着地するんだ。着地できるんだ!夢じゃないか!?奇跡じゃないか!?
飛行機は滑走路に着陸し、ターミナル搭乗口から少し離れたところで完全に止まりました。涙が溢れました。他の乗客たちは手をたたいて喜んでいます。そこでようやくCAから事態の説明がありました。「現在地はスイス・ジュネーブで、警察隊がすぐに駆け付ける予定だ」と。
やがてスイス警察の部隊が到着し、私たちに手を頭の上に乗せて冷静に待機するよう告げ、乗客一人当たり2~3分かけて救出作業を行いました。私がようやく外に出られたのは約1時間後です。
スイス当局は私たちをとても手厚く保護してくれ、サンドイッチやホットチョコレート、無料WiFi、カウンセラーなどを提供してくれました。数時間後、私は荷物を受け取り、通常ゲートから外に出ました。そこには母の姿がありました。私たちはレマン湖の周りを少し散歩し、母がおいしい手料理を作ってくれました。
精神的な影響は決して小さくありません。いまだにショック状態です。私はとてもラッキーでした。誰もあんな体験をすることのないよう願っています。
質問があればどうぞ。
※ ※ ※
<以下、スレッドでのやり取りをいくつか…>
Q:今回の事件についての報道で、どこか間違っているところはあった?当事者の話を聞く度に思うんだが、いつもニュースは事実誤認してるからさ
A:「当局によると、乗客はハイジャックに遭ったことを認識していなかった」
って報道されてたけど、みんな完全にわかってたよ。そこが一番つらかったところだ
Q:コックピットにいた人たち以外の乗員乗客はみんな解放されたの?
A:スイス警察隊が登場 → ビジネスクラス解放 → クルー解放 → エコノミークラス解放。解放っていうのは、両手を上げながら外に出て、警察官に囲まれながら身体検査を受けるってことね
↑:ハイジャックでも、ビジネスクラスが優先なのか…
Q:トイレに行ったりとか、カバンを下したりとか、飛行機の中を自由に動き回ることはできた?それとも“見張り役”みたいな奴がいたの?
A:動くのは自由だった。見張り役はいなかったみたいだし、犯人はコックピットに閉じこもってたからね。スチュワーデスさんたちは飲み物配ったり、大丈夫だからってみんなに言葉かけてたりしたよ。でも泣いてるCAさんもいたなあ。
Q:9・11の乗客みたいに「ヒーローになろう」って一瞬でも考えた?それとも恐怖でそんなこと考える余裕もなかった?
A:すごく考えたよ。でも犯人に完全に飛行機を掌握されてるし、失敗した時のリスクが大きすぎると思って考え直した。
Q:また飛行機に乗れると思う?着陸後は航空会社から援助はあったの?
話は変わるけど、パイロットはみんなを席につかせるために機内の空気圧を下げたのかな?
A:うん、また飛行機は使うと思う。援助はスイスの当局が提供してくれた。食べ物や飲み物、情報、電話など…、すごく手厚いサポートだったよ。
たぶんね。乗客を着席させるために空気圧を下げたんじゃないかな。でも20~30分後には正常に戻ってた。アナウンスメントはなかったけど、誰かがマスクを外したら、みんな真似した。
Q:死と直面するのはどんな感じだった?逆に安らかな気持ちになったりしなかった?死を受け入れた?それとも希望を持ち続けた?
A:病院で死の床につくような感じなのかな。すごく怖い。終わりが近いのもわかってる。いろいろなことを考えたね。「後悔はないか、誰が葬式に来てくれるのか、これは現実か…」。いくらあがいても無駄なんだ。だから90%は死を受け入れたよ
Q:航空会社から補償や謝罪はあった?
PTSDの診断や治療は?
A:いい質問だね。明日エアラインに電話して聞いてみよう。
スイス政府の心理カウンセラーが今晩電話くれるはずだ
Q:どのポイントで「もし生きて帰れたらスレ立てしよう」って思ったの?
A:(笑)むしろ、生きては帰れないだろうなって感じだったからね。このスレが注目されて嬉しいよ。ありがとう
Q:今日は人生最高の日かい?
A:いい質問だ。僕の頭はまだ飛行機の中だよ
Thumbnail by urish via Flickr
ソース:「Reddit」
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