どうなる、インターネットの未来:Stop Online Piracy Act(SOPA)とは?

著作権とオンライン・フリーダム(自由)の争いは、我々の知るインターネットの姿を変えてしまうかもしれない。

今、インターネットの未来は、分岐点に立たされています。ここ数ヶ月の間で、「SOPA」という言葉をネットやテレビ、新聞などで、目にした方も多いのではないでしょうか。SOPAとは、著作権保護法案「Stop Online Piracy Act」の通称で、米下院議会によって提出された、オンラインコンテンツの著作権を守ろうという法案です。著作権保護といえば聞こえはいいですが、この法案がなかなかの曲者で、もし可決された場合、私達が毎日のように利用する検索エンジンや動画共有サイトなどが規制されてしまう恐れがあるのです。

現在、この法案を巡って、アメリカの議会、ビジネス界、世論が大きく揺れています。GoogleやYahoo、Facebookをはじめとするシリコンバレーの大手ネット企業は、SOPAに対し真っ向から反対の姿勢を示しました。一方で音楽業界やハリウッドでは、著作権を保護するために必要不可欠な法律だとして、全面的にサポートしています。

一体SOPAによって、私達のネット生活はどのように変わっていくのか?米ニュースサイト「CNET.com」が今回のテーマについて詳しく取り上げているので、SOPAとは何なのか、Q&A方式で少しずつ紐解いていきたいと思います。

SOPAとは?

Q: SOPAの大義名分は?
A: アメリカの映画や音楽などの著作物を、海外の不正サイト(Rogue website)から保護するための法案。要するに、海賊サイト撲滅法案だ。SOPA推進派の主力である米商工会議所は、『New York Times』紙への手紙で、

アメリカの優れた著作物を無断で使用する不正サイトは、年間約530億のアクセス数を獲得している。それは、アメリカから資本を盗み出すに等しい行為であり、アメリカ国内の雇用を驚異的に脅かすものである

として、SOPAの正当性を主張している。

Q: SOPAの仕組みとは?
A: インターネット上での死刑宣告のようなもの。SOPAが可決されれば、米当局は、不正サイトにサービスを提供するISPや検索エンジンに対し、強制的にサービスの提供を破棄するよう裁判所命令を突きつけることができるようになる。当局が不正サイトを発見した場合、ISPや検索エンジンにそのサイトへのアクセスを遮断するよう命令できるというわけだ。つまり、これまである程度自由だったインターネットに対して、政府が絶大な管理力、執行力を手にしてしまうということ。YouTubeやGoogle検索なども、大幅な規制を受ける可能性がある。

Q: SOPAの推進派はどんな人?
A: アメリカ映画協会(MPAA)、アメリカレコード協会(RIAA)、米商工会議所が推進派の代表格として挙げられる。

Q: SOPAの反対派はどんな人?
A: IT業界、ネットユーザーの大多数。特にシリコンバレー勢は猛反対しており、Google、Facebook、Twitter、eBay、AOL、Yahooなどネット業界の超大手企業は、連盟で反対を表明する手紙を政府宛に提出している。さらに、Yahooは今回の対立で、米商工会議所を脱退したといわれている。企業が懸念するポイントは、「SOPAが可決されると、訴訟などが多発し、ネット業界のイノベーションが死んでしまう」というところだ。

Q: SOPAが可決された場合、ISP(プロバイダ)に要求されることは?
A: ISPに要求されることは、ユーザートラフィックの監視と、著作権侵害の疑いがあるWebサイトの遮断など。この点については、今後の展開でずいぶんと変わるはずだ。

Q: どんなサイトがSOPAの規制対象?
A: 規制の対象となるサイトは、アメリカ向けのサービスやコンテンツで、著作権侵害を助長する内容のもの。反対派からは、中国の検閲システム「金盾(Great Firewall of China)」を文字って「Great Firewall of America」と呼ばれている。実際のところ、法案にある文章は、実に幅広く掴みどころがない。SOPA第101条には、対象となるサイトについて次のように記されている:

(1)アメリカ合衆国のユーザーに対し、不正コンテンツやサービスを提供するサイト

(2)およびサイトの一部に不正コンテンツやサービスを含むサイト(動画共有サイト)、又は不正コンテンツやサービスへのアクセスを提供するサイト(検索エンジン)

(3)および不正コンテンツやサービスの掲載を防ぐために適切な処置を行わないサイト

Q: SOPAに対する各界の見方は?
A: アメリカ映画協会(MPAA)は、合憲的だとして賞賛している。一方で、ウェブブラウザ「Firefox」を提供するMozillaは、反対キャンペーンのページを作り、SOPAを激しく批判している。Mozillaはキャンペーンページの中で、

「インターネットを守れ: あなたのお気に入りのサイトが著作権侵害という言いがかりを付けられて遮断されるかもしれません。この”インターネット・ブラックリスト法案”を阻止するためにあなたの力が必要です」

とユーザーに反対運動への参加を促している。

これからの展開は?

12月16日に予定されていた米下院での決議投票は、先送りされることとなった。現時点では、SOPAは下院法務委員会を通過するだろうとの見方が強い。だが、反対派の勢力は日に日に増しており、これからのロビー活動やデモ活動にインターネットの未来が掛かっている。次の投票は、おそらく2012年になるだろう。

ツイートやブログのコメント板など、いろいろなソーシャルコンテンツを調査してみたところ、ネット世論の99%はSOPAに反対しているように思えます。インターネットの将来を大きく左右するであろうこの法案の流れに、今後も注目していきたいと思います。

SOPA関連記事まとめ

Comments

  1. これは酷い法案ですね。
    一つ恐ろしい事はSOPAとTPPの関係。
    この二つのがアメリカの思い通りになると
    文字通りアメリカは世界を牛耳る事になりそうですね。

    TPPでは
    金融、電子取引、電気通信などのサービスの自由化、
    技術の特許、商標などの知的財産権
    を謳っているのに実はその先にこんな壁が待っているとはね。

    アメリカは今飢えた獅子も同然になってしまったのか、
    その影響で周辺各国が痛い爪跡を残すことだけにはなってほしくないですね。

  2. Hi,

    thank you for your interest in our little straw bale hotel.

    We wish you all the best for 2012 and a lot of success for your blogging.

    Greetings from Switzerland

    Louis

  3. 名無しさん says:

    中国の万里の長城を文字って「Great Firewall of America(万里のファイヤーウォール)」と呼ばれている。

    中国の検閲システムであるGreat Firewall of china(金盾)を文字って~
    かと。
    中国のガチガチ検閲のアメリカ版という意味で、もう少し辛辣的な比喩だと思いますよ。

    • おっしゃる通りですね。

      万里の長城(great wall of China)を文字って金盾(Great Firewall of China)

      Great Firewall of Chinaを文字ってGreat Firewall of America
      ですね。一段階飛ばしていました。

      貴重なご意見ありがとうございます。
      さっそく、参考にさせていただいます。

  4. サイトそれぞれがアメリカユーザーからのアクセスとアメリカのコンテンツを遮断すればよくない?
    そうすれば世界市場から取り残されて困るのはアメリカだし。

  5. この問題は私いるフランスの英語の授業でもとりあげられてました。どちらに賛成するかは難しい問題ですね。いずれにせよ、アメリカの法案成立のあと、先進国各国がそれに従うまたは準じる可能性があるので、世界中が注目していることだと思います。

    • とりあえずSOPA法制化の延期が決定したようですが、今後どうなっていくのか注目していきたいです。
      授業で取り上げられていたんですね。とてもいいディスカッション・トピックになると思います。クラスが賛成派と反対派に分かれて議論して・・・

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  1. […] ※詳しくは、「どうなる、インターネットの未来: SOPAとは?」をご覧ください。 […]

  2. […] 1.「どうなる、インターネットの未来: SOPAとは?」 […]

  3. […] 10月に米議会下院で提出された著作権保護法案「Stop Online Piracy Act(SOPA)」が、大きな議論を呼んでいる。同法案は、著作権保持者の許可なくコンテンツを不正に流通させる行為を阻止し、著作権保持者を保護する目的で立案されたものだ。これが可決されると、米当局は、著作権違法行為を働くウェブサイトにサービスを提供するISPや検索エンジン、ネット広告提供者などに対して、サービス提供を強制的に停止させる権限を持つことになる。 […]

  4. […] 現在米国では、著作権保護法案「Stop Online Piracy Act (SOPA)」を巡り、さまざまな議論が繰り広げられている。そんな中、90年代前後に一世を風靡した伝説のエンターテイナー、M.C.ハマーが、Twitterを通してSOPAへの反対姿勢を明らかにした。 […]

  5. […] // var _wpcf7 = { cached: 1 }; // if(typeof jQuery === "undefined"){google.load("jquery", "1.3.2");} jQuery(document).ready( function () { jQuery('a[href^=http]').not('[href*="'+location.hostname+'"]').attr('target','_blank'); }) .entry-content img {max-width: 100000%; /* override */}#rotator { position: relative; width: 940px; height: 300px; margin: 0; padding: 0; overflow: hidden; }body.custom-background { background-image: url('http://yoyonews.jp/wp-content/uploads/2012/01/42-31.jpg&#039;); background-repeat: repeat-x; background-position: top center; background-attachment: fixed; }.recentcomments a{display:inline !important;padding:0 !important;margin:0 !important;}yoyonews.jpとはトリックリストone step closer – OSCGIOYトリックリストリンクについてリンク集(国内)リンク集(海外)お問い合わせスペシャルサンクス ホーム > ニュース > ヨーヨーのビデオがYouTubeから消える?アメリカで著作権保護法案「SOPA」への抗議活動強まるヨーヨーのビデオがYouTubeから消える?アメリカで著作権保護法案「SOPA」への抗議活動強まる インターネットを通じて、ヨーヨーのことをまったく知らなかった人がヨーヨーを手に取ったり、プレイヤーはモチベーションを高めあったり、全国大会や世界大会に出場するトッププレイヤーたちが世に出たりと、もはやヨーヨーにとって、インターネットは欠かせないものとなっています。そしてこれは、決してヨーヨーだけではなく、ほぼすべての業界に通じて言えることでしょう。インターネットを通じて知り得た情報は、いまや日常生活では欠かせないものとなっています。そんなインターネットがいま、脅威に晒されています。オンライン海賊行為防止法案「SOPA – Stop Online Piracy Act」が米国議会に提出されたからです。米国内では、これに対する抗議活動が活発化しています。 この法案は、カンタンにいうと「著作権を侵害しているようなサイトを、強制的に排除できる法令」ということです。たとえば、アメリカ政府があるサイトを「著作権を侵害しているサイト」と認めると、そこへのアクセスを提供しているサイトは、そのサイトへのアクセスできなくなるようにするよう処置をせよ(ブロックせよ)、という命令が下されます。これにより、不正サイトを撲滅させるという狙いがあります。「あくまでアメリカでの問題で、日本では影響がないのでは?」という疑問が湧く方もいるのではと思います。確かに、あくまでアメリカの法案の話ですから、アメリカのサイトから不正サイトへのアクセスが遮断されるだけで、一見日本には影響がないように思えます。 しかし、普段から日本人でも利用者が多いと思われるサイトは、実は多くはアメリカから生まれたものです。例えば検索エンジンのGoogle、インターネットユーザーが作る百科事典のWikipedia、世界中の人と交流できるFacebookやTwitter、そしていまや知らない人は居ないであろう動画サイトのYouTubeなど。これらのサイトが、政府により、自由に情報を閲覧できなくなる可能性が非常に高い点が危惧されています。日本語版のGoogleでさえ、サーバーはワシントンDCにあるそうです。 さらにこの法案では、「著作権保持者でなくでも訴えることが可能」であり、悪意ある第三者が、ほぼ無差別的に悪意のないサイトを訴え、閉鎖へと追い込むことが可能なのも、重要な点です。(実際に著作権を違反しているのであれば、たとえ悪意がなくても訴えられるべきではありますが)→SOPAについて詳しくは、わかりやすくまとめられているコチラのサイトをご…さて、それではヨーヨーの世界には、具体的にどのような影響がでるのか。それについてまとめた記事を、アメリカのヨーヨー情報サイト「YoYoSkills.com」が掲載しています。 これによると、SOPAという法案は、掘り下げていけば、ロゴの入ったヨーヨーをサイトに載せたり動画に載せたり、カスタマイズされたヨーヨーの情報を載せるだけでも違法と扱われてしまうとのことです。本当にそうなれば、もはや、ヨーヨーのサイトでもヨーヨーを映してはいけないという異常事態です。こうした事態を全力で阻止するため、アメリカの多くの大手サイトでは署名活動を行なっていたり、サイトの表示を停止(ブラックアウト)させたりといったカタチで抗議しています。とくに、Wikipediaでの「Image a World Without Free Knowlege(情報が自由に得られない世界を想像してみたまえ)」というメッセージと共に一日ブラックアウトしたことは、世界中で話題となりました。→産経:SOPAやPIPAに対する抗議行動が拡大、Facebookも反対表明毎日一億人以上ものアクセスがあるサイトが一日閉鎖したことは、多くのインターネットユーザーにとって大打撃となることは必至です。それを覚悟のうえでも、実施しなければならないほど阻止しなければならない法案である、という意志が強く伝わってくる事件です。 そしてYoYoSkills.com自身も、このSOPAへの抗議活動に参加すると表明しています。       確かに、昨今の有象無象に音楽などがアップロードされ放題な不正サイト事情は目に余るものがありますが……。なんにせよ、全てが丸く収まってくれると良いのですが。→よければ、同時に議論されることの多い「PIPA – PROTECT IP Act」についてもお調べください。>>SOPAとPIPAがインターネットを破壊する(英語) PROTECT IP / SOPA Breaks The Internet from Fight for the Future on Vimeo.http://www.yoyoskills.com/?p=9823 YoYoSkill.com SOPA / PIPA and YouTweetupdate: 2012/01/20/01:10 | ニュースコメントを残す コメントをキャンセルメールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です名前 *メールアドレス *ウェブサイトコメント次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt=""> […]

  6. […] アノニマスをはじめとする反対派が懸念するのは、3)の「ISPによる問題情報の削除」についてだ。これには、ISPによるユーザー個人情報の提供(著作権保持者からの要求があれば)、著作権侵害の疑いがあるWebサイトの強制遮断などが含まれている。最近棚卸しとなった米著作権保護法案「SOPA」のインターナショナル版といったところだ。これに対し、「インターネットの自由に対する脅威」だとして、反対派が激しく批判している。 […]

  7. […] これまで秘密裏に推し進められてきた同条約だが、「SOPA」のような性質を含む(ISPによるユーザー個人情報の提供、著作権侵害の疑いがあるWebサイトの強制遮断など)ことが明らかになり、ネットの自由を脅かすものだとして、世界各地で反発の声が高まっている。   評価: Share this:Share on Tumblr続きLike this:Like一番乗りで「Like」しませんか。 […]

  8. […] 児童ポルノ保有者のIPアドレスを警察がリスト化、ISPが警告メールを送信 どうなる、インターネットの未来:Stop Online Piracy Act(SOPA)とは? […]

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