米銃乱射事件から学ぶこと:「銃規制よりも心のケアに焦点を」、精神病の息子を持つ母親の訴え

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米コネティカット州サンディフックで発生した銃乱射事件。14日の朝、犯人のアダム・ランザ(20)は自宅で母親を殺害した後、銃を持って小学校に押し入り、子供20人を含む26人の命を奪った。すべてを諦めたくなるような、あまりにも理不尽な悲劇だ。

史上稀にみる凶悪な事件を受け、アメリカでは議論が巻き起こっている。何かが致命的に間違っていることに、人々が気づき始めた。

銃規制の是非に焦点が集まる中、ライターであり母親であるリザ・ロングさんは「必要なのは精神病のケアを充実させること」と強く訴える。彼女には、重度の精神病に苦しむ13歳の息子がいて、今回の事件が他人事とは思えないのだという。

息子を愛してる、でも息子が恐ろしくてたまらな

息子をランザ容疑者と重ね合わせながら、彼女は自らが抱える絶望的な家庭問題を、自身のブログで赤裸々に綴った。「今回のような悲劇を繰り返さないために何ができるのか?」、問題は銃云々ではなく、もっと根本的なところにあるのかもしれない。

<以下、リザ・ロングさんのブログ記事『Thinking the Unthinkable』の抄訳>

コネティカット銃乱射事件を受け、母親の苦悩

アダム・ランザが母親を殺害し、サンディフックの悪夢を巻き起こすちょうど3日前のこと。その日、息子のマイケル(仮名)はスクールバスを逃し、学校に遅刻しました。履いていくズボンの色を間違えてしまったからです。

このズボンで構わないよ」、瞳孔を開かせながら、マイケルの口調は少しずつ攻撃的になりはじめました。

それは紺色じゃない。黒かカーキが学校の決まりでしょ」、私は言いました。

この色でもいいって言われたんだ!」、マイケルは言い返してきます。「お前は馬鹿な女だな。俺は履きたいズボンを履いていくからな。ここはアメリカだ。俺には権利があるんだよ!

そんな言い草は通らないでしょ」、私はできるだけ優しく、穏便に言いました。「それから、母さんのことを“馬鹿な女”なんて呼んじゃだめ。罰として今日1日ゲームを没収します。わかったら早く車に乗りなさい、学校に連れて行くから…

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私は、精神病を抱える息子と暮らしています。息子を愛しています。でも息子が恐ろしくてたまりません。

数週間前、マイケルはナイフを振りかざして、私を殺してから自分も死ぬと脅してきました。私はただ、図書館に本を返して来いと告げただけです。私の他の子供たちは、マイケルの発作が始まったときの手順を心得ています。彼らは、私が何も言わずとも車に走っていき、鍵をかけて身を潜めていました。

私は何とかマイケルからナイフを取り上げ、それから家中の刃物をすべて回収しました。その間もマイケルは罵り続け、殺してやると脅してきます。ようやく事態が収集したのは、3名の警官と救急隊員が駆けつけ、マイケルを力ずくで押さえつけてからです。そのままマイケルを高価な救急車に押し込め、近くの病院まで連れて行きました。

その日は精神病棟のベットに空きがなく、マイケルの様子も落ち着いてきたので、精神疾患用の薬(ジプレキサ)をもらい、私たちは病院を後にしました。この騒動があってから、私は家にあるすべての刃物をタッパーに入れて持ち歩くようにしています。

マイケルの病気が何なのか、確かなことは未だにわかりません。自閉症、ADHD、反抗挑戦性障害、間欠性爆発性障害、いろいろと言われてきました。マイケルは多量の抗精神病薬をずっと摂取し続けています。しかし、何の効果もありません。

マイケルは中学に上がるとき、数学・科学の成績が優秀だったことから、上級のコースに招待されました。とてもIQが高く、頭のいい子なんです。機嫌のいい時には、ギリシャ神話にはじまり、アインシュタイン論とニュートン論の違いまで、いろいろな話で楽しませてくれます。しかし機嫌が悪くなるともうダメです。何がきっかけで発作が起こるのかさえわかりません。

中学に通い始めてから数週間もすると、マイケルはクラスでも横暴な態度を取り始めました。そこで、しかたなくもっとしつけの厳しい学校へと転校させることにしたのです。

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ズボンのことでもめた朝、車で学校に行く途中、私たちはずっと口論を続けていました。時折マイケルは私に謝りながら反省したような素振りをみせます。学校の駐車場に入る直前、マイケルは私に向かって言いました、「ねえ、母さん。ごめんなさい。だから今日ゲームを返してくれる?

ダメです。今朝あんな態度をとっておいて、すぐに許してもらえると思わないで」、私はそうあの子に返しました。

するとマイケルの表情は突然冷酷になり、怒りに満ち溢れた目でこう言いました、「いいよ、じゃあ自殺するから。今すぐ車から飛び降りて死んでやる

もう限界でした。ナイフの一件の後、もしまた自殺を口にすれば問答無用で精神病院に連れて行くとマイケルに告げてあります。私は無言のまま車を反対車線に回し、学校とは逆の方向に走らせました。
どこへ連れてく気?どこに行くんだよ?」、マイケルは心配そうに尋ねます。

分かってるでしょ」、私はそう返しました。

やめろ!それはなしだ!僕を地獄に送るっていうのか!

私は車を病院の玄関口に停め、近くにいたスタッフに必死で手を振り、すぐに警察を呼んでもらいました。すでにマイケルは暴れはじめ、手の付けられない状態です。私はあの子が車から逃げないように、強く抱きしめていました。マイケルは何度も私に噛みつき、肘でアバラを打ってきます。まだかろうじて私の方が力が強いですが、それも長くは続かないでしょう。

警察がすぐに到着し、暴れる息子を取り押さえて、病院の奥へと運んでいきました。受付で用紙に記入しているとき、私の体は震えはじめ、涙が溢れて止まりませんでした。

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少なくとも、私には健康保険があります。この保険のベネフィットを得るために、最近私はフリーランスの仕事をあきらめ、地元の大学で職に就きました。マイケルのような息子を抱える家庭には、絶対にベネフィットが必要です。民間保険では、私のようなケースはほとんどカバーされません。

息子は入院してから数日の間、私が嘘をついているのだと病院の人達に言い張っていました。私が彼を追い払うために話を作ったのだと…。初日、マイケルは電話越しにこう私に告げました、「お前が嫌いだ。ここから出たらすぐに仕返しにいくからな

3日もするとマイケルの状態は落ち着き、いつもの優しい男の子に戻りました。そして私に謝り、もうしないから、かならずよくなるからと誓うのです。私はこの言葉を何年のあいだ聞かされ続けてきたことか…。もはや信じることができません。

身柄引き受けの書類に記入していると、「どのような治療を望まれますか?」という質問に突き当たりました。私はそこに「救いの手が必要です」とだけ書き残しました。

私は本当に助けを必要としています。この問題は、私ひとりには荷が重すぎるのです。時には、何の選択肢もありません。祈りをささげ、いつかすべてが解決するよう願うしか術がないのです。

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私はアダム・ランザの母です。エリック・ハリスとディラン・クレボルド(コロンバイン高校銃乱射事件)の母でもあり、ジェームズ・ホームズ(オーロラ乱射事件)、チョ・スンヒ(バージニア工科大学銃乱射事件)の母でもあります。この子たちと彼らの母親は、救いの手を探していたのです。今回のような大惨事が起こった後に、拳銃のことだけを議論するのは簡単です。しかし今こそ、心の病に焦点を当てるべきだと思います。

Mother Jones』によると、1982年以降、アメリカで起きた銃による大量殺人は61件。このうちの43件が白人男性によるもので、女性による事件は1つだけです。Mother Jonesは、犯人が武器となった銃を合法的に手に入れたかどうかに焦点を当てています。しかし、 これらのケースで明らかにみられる精神障害の痕跡は、この国でどれだけたくさんの人が、私のように恐怖に怯えながら暮らしているのかを考えさせられるものです。

銃乱射による大量殺人事件 1982-2012

以前私は息子の福祉担当者に、私が取れる選択肢について尋ねたことがあります。その時、彼はこう言いました、「マイケルを罪に問うしか方法がない」。

息子は刑務所にいるべき人間なのでしょうか?刑務所のような厳しい環境では、マイケルの病状は脳の奥まで悪化するだけでしょうし、根本にある精神障害に対して何の解決にもなりません。しかし精神病者に対するアメリカ合衆国の答えは、どうやら牢獄のようです。

人権団体ヒューマンライツ・ウォッチによると、米刑務所内における精神病者の数は、 2000年から2006年の間で4倍に跳ね上がりました。その割合は、なんと刑務所人口の56%を占めており、一般社会の5倍にあたります。公共の治療施設や病院が次々と閉鎖される中、刑務所は精神病者たちが最終的に行きつく先となったのです。

私はマイケルを刑務所なんかに送りたくはありません。息子はまだハリーポッターが大好きな13歳の子供なのです。しかし、精神障害に対する偏見と崩壊した医療制度で成り立つこの社会。そこでは、他に選択肢がありません。

そして、苦しみぬいた魂がレストランで、ショッピングモールで、小学校の教室で新たな悪夢を引き起こす。その時、私たちは両手を固く握り合わせながら再びこう言うのです、「何とかしなければ

何とかしなければなりません。メンタルヘルスとケアに関して、国レベルで意義のある議論がなされるべき時がきています。それこそが、この国の傷が本当の意味で癒される唯一の方法です。

神様、どうか私を、マイケルを、すべての人をお救いください。

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リザ・ロングさんの記事は、大手メディアが取り上げたことによりソーシャルネットワークでバイラルに広がった。『Huffington Post』が転載した記事は30万回以上シェアされ、1万4000件以上のコメントが寄せられている。

[anarchistsoccermom.blogspot.jp]

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