衝撃の養鶏アプローチ: 脳を殺して『マトリックス』風に飼育

photo Andre Ford

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先日『Wired.co.uk』が、「養鶏」に関するとても興味深い記事を掲載していた。鶏の脳を殺して大量飼育を可能にするためのシステムを開発するという、実に波紋を呼びそうな内容だ。


新たな養鶏アプローチ「Headless Chicken Solution」


毎年イギリスでは、約8億羽のブロイラー鶏が食用として飼育される。一般的に鶏たちは、生まれてから商品になるまでの6~7週間の間、自然光のあたらない鶏舎で育てられるという。短期間で成熟するよう品種改良されており、肺や心臓が急激な成長についていけず、死んでしまう鶏も多いようだ。

養鶏業では以前から、「過密飼育」が問題となっている。そこで、ある学者が「盲目鶏ソリューション(Blind Chicken Solution)」という飼育法を提案した。盲目の鶏は普通の鶏に比べ、過密状態になることを怖がらないという。鶏の目を見えなくして苦痛を少しでも和らげてやるという人道的な考えに基づいており、「過密飼育」への解決策になるのではないかと一部で注目を浴びた。

今回、建築学生のアンドレ・フォードは、そのアイデアを一歩先に進め、鶏肉を大量生産するためのシステム「Headless Chicken Solution(首なし鶏ソリューション)」を提案した。

このアイデアは実に衝撃的で、鶏の大脳皮質(ニューロンの神経細胞体が集中する部分)を取り除き、生体維持装置につないで飼育するというものだ。感覚認知を抑制することで、鶏たちに苦痛や恐怖を与えることなく、極度の過密飼育が可能になるとフォードは主張する。

フォードは、今回のソリューションを提案した理由を2つ挙げている:

①増え続ける鶏肉への需要に対応するため
②脳を殺すことで、鶏たちの苦痛を和らげるため

「Headless Chicken Solution」の簡単な流れはこうだ:

鶏の大脳皮質を取り除く。
恒常性機能を持続させるため、脳幹はそのまま保持


巨大な生体維持装置にまとめて積み上げる

飼育密度を高めるため、鶏の足も取り除く

チューブから餌や水、酸素の供給や排泄の処理を行う

ちょうど映画『マトリックス』で、人間が発電装置として生体維持装置のチューブや電気プラグに繋がれていたようなイメージだ。現存の鶏舎では、1立方メートルあたり3.2羽の飼育が限界だといわれている。新たなシステムを用いることで、1立方メートルにつき11.7羽が飼育でき、大幅に生産効率が向上するのだという。

 

Photo by Andre Ford

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フォードは『Wired』誌へのインタビューで、「現存の養鶏システムも、同じくらい衝撃的なものだ。ただ、消費者がその現状に気づいていないか、もしくは見ない振りをしているだけだ」と語った。

「現存のシステムとの最も大きな違いは、鶏の苦痛を取り除いてやれるということだ。私のシステムが人道的に正しいかどうかは、消費者が決めればいい」

また彼は、「自身のシステム」と「マトリックス」との類似点についても触れている。

「似ているのは認めるが、マトリックスの方が良心的だと思う。映画の中で、優性種の“マシン”は、チューブにつながれた劣等種の“人間”に夢(仮の現実)を見させている。しかも、現実よりも格段素晴らしいものをだ。このシステムでは、鶏たちは“素敵な夢”を見ることなんかない」

まだまだ開発段階のシステムだが、一般に採用される可能性はあるだろうか?

確かに、家畜の苦痛を和らげることや、生産性・効率を考慮すると、非常に優れたシステムかもしれない。だが、これではもはや鶏たちは「動物」とは呼べず、野菜や果物と同じ「植物」でしかなくなってしまう。

「動く、食べる、鳴く」という動物の根本的な生態を奪ってまで、人間の生活を向上させるべきなのか?そもそも、人間にそんな権利はあるのか?非常に難しい問題だと思う。

皆さんはどう思いますか?

Comments

  1. 田中喜久親 says:

    人はパンのみに生きるにあらず。
    生命の通わぬ、生育はなし。

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