2011年IT業界のトップニュースまとめ

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2011年も残すところあと僅かとなりました。今年は、東日本大震災や原発問題、アラブ騒動、タイの大洪水、TPP問題など、まさに世界が揺れ動いた1年でした。同様にIT業界でも、さまざまな変化があったように思えます。

スマートフォンやタブレットの普及により、モバイル化・ソーシャル化が急速に進んだネットの世界は、現実世界の政治やシステムに多大な影響を及ぼすようになりました。また、「アノニマス」なるハッカー組織の活動が目立つようになり、政府や企業、団体など、あらゆる組織がサイバー攻撃のターゲットとなりました。そして後半には、アップルの創設者、スティーブ・ジョブス氏が亡くなり、IT業界だけではなく世界中が彼との別れを惜しみました。

今回、IDGニュースサービスの記事をもとに、Windows 8からSOPA、IPアドレス問題など、2011年に起きたIT業界の主要ニュースを簡単に振り返ってみたいと思います。

エジプトがオフライン化

エジプト

1月28日、カイロ現地時間の午前0時すぎ、地球上のインターネット通信ネットワークからエジプトが姿を消した。エジプトのISP(プロバイダー)が、反対デモの拡大を恐れた政府からの圧力を受け、国内のネット通信を遮断したのだ。意図的に国全体のインターネットが遮断された事例は、おそらくこれが始めてだろう。モバイル通信も、同時に遮断され、ネットワークがすべて回復したのは5日後のことだった。

その数ヵ月後、リビア、シリア両政府もインターネットの遮断を実行。ネットの社会的影響力は日に日に増しており、今後も政変下の国々によるネット規制や遮断は後を耐えないだろう。

マイクロソフトが目指す世界観: ARM対応のWindows 8

1月、米マイクロソフトは、ARMアーキテクチャ対応の次世代Windows戦略を発表し、Windows 8 の世界観を明らかにした。Windowsの領域を、急速に拡大するタブレット市場に広げ、PCからタブレットまでの一貫したプラットフォームサポートを実現することが狙いだと思われる。最も注目すべきWindows 8の特徴は、新インターフェース「Metro(メトロ)」だろう。Metroは、タッチ対応のUIで、なおかつ従来のキーボード/マウス操作にも対応する。

ただ、多くの企業はWindows 7への移行の真っ只中にあり、2012年発売予定のWindows 8への移行は、タブレット以外ではそれほど見込めそうにない。また、タブレット市場では、アップルのiPadに大幅な差をつけられており、巻き返しには相当な努力と斬新な戦略が必要となる。10年前は、PC市場を圧巻したマイクロソフトだが、再びその地位を回復することはできるのか?

IPv4の枯渇、差し迫るIPv6への移行

2月、IPアドレスなどのインターネット資源を管理するIANA(Internet Assigned Numbers Authority)に残っていた5つのアドレスブロックが、世界5地域の地域インターネットレジストリ(RIR)にそれぞれ1つずつ割り振られた。約43億のIPアドレスを提供したIPv4の枯渇は、インターネットの急激な普及を象徴している。

そこで持ち上がるのが、IPv6への移行問題だ。IPv6は、より優れたセキュリティーやネットワークマネジメントを提供する。しかも、振り分け可能なアドレスは天文学的数字で、枯渇することはない。ちなみに、IPv6ベースのホストは、IPv4のシステムと互換性がないので、最終的には、IPv6への完全移行が必須となる。これからの各国の移行手順に注目していきたい。

大災害

3月11日に起きた東日本大震災は、日本に深い傷跡を残した。その影響は、電子部品業界にまで及んでいる。震災や津波により、Sony、Freescale、Fujitsu、Texas Instrumentsなどの工場は大打撃を受け、原料や部品の供給が滞り、フラッシュメモリーやマイクロコントローラ、LCDパーツなどの値段が高騰した。さらに、今年後半に入ってからのタイ大洪水が、停滞中のPCマーケットに追い討ちをかけた。アナリストによると、2010年には30%の拡大をみせた半導体業界だが、PCメモリーの売り上げが15%下落したことで、今年は1%にも満たない成長率しか見込めないという。

ハッカー集団「アノニマス」の台頭

4月、Sonyの「PlayStation 3」と「キュリオシティ(ビデオ配信サービス)」のネットワークが「アノニマス」と名乗るハッカー集団からDDos攻撃を受け、一時接続不能の事態に陥った。それからまもなくして、同ネットワークは不法侵入を受け、約1億人のユーザー情報が流出。Sonyは事態収集のために、約1億7000万ドルの損失を被った。

今や世界的に名の知れ渡ったハッカー集団のアノニマスは、Sony騒動後も活動の舞台をどんどんと拡大させていった。その攻撃目標は、「ジャスミン革命」を抑制しようとする各国政府、NATO(北大西洋条約機構) 、児童ポルノサイト、大手銀行(Bank of America)、さらにメキシコの麻薬組織(セタス)にまで及んだ。活動範囲が広がるに伴い、米、英、スペインなど各国で次々とメンバーが逮捕されることとなったが、アノニマスは「ハッキングが世の中に与える影響」を世間に知らしめることに成功し、今後もネットのよる”世直し”を続けていく様子だ。

アップルとサムスンの特許訴訟問題: アンドロイドの苦難

4月にアメリカで巻き起こった米Apple社の韓Samsung社に対する訴訟問題は、ドイツ、フランス、オーストラリアなど各地に飛び火した。事の発端は、当時スマートフォン・タブレット市場を独占していたアップルが、サムスン製スマートフォン『Galaxy S 4G』等のデザインが『iPhone』の模倣であるとして、商標侵害で提訴したことに始まる。 アップルが最も危惧したのはサムスンではなく、Googleアンドロイドの存在だといわれている。

急成長するアンドロイドシェアがトラブルの原因となり、Googleは複数の競争相手から訴訟を起こされることとなった。2010年、米オラクルは、アンドロイドがJava関連の著作権を侵害したとして提訴。米マイクロソフトもアンドロイドの人気に目をつけ、サムスンと特許クロスライセンス契約を締結した。これは、Android端末について、サムスンがマイクロソフトへロイヤリティーを支払うというものだ。一方でGoogleは、ライバルからの知財面攻撃の対策として、モトローラ・モビリティの買収に乗り切った。スマホやタブレットの売り上げが爆発的に伸びる中、アンドロイド関連の特許争いは、しばらくは収まりそうもない。

泥沼にはまるHP

9月、米ヒューレット・パッカード(HP)のCEO、レオ・アポテカー氏が、就任から1年も経たずして解任された。それは、HPがパソコン事業からの撤退を検討すると発表してから間もなくの出来事だった。ここ数年のHPは、泥沼でもがき苦しんでいるようにみえる。前CEOのマーク・ハード氏は、去年巻き起こったセクシャル・ハラスメント騒動で辞任を余儀なくされ、後釜として据えられたのが、アポテカー氏だ。HPの再建を期待された同氏だが、就任後の売上高や株価の低迷で 、アポテカー氏の手腕が疑問視され始めた。

極め付けが、タブレット市場からの撤退とPC事業の分離。いわゆるハード主体からソフト主体への移行というアポテカー氏のビジョンに、株主やトップ陣が反対し、解任へと至った。新CEOのメグ・ウィットマン氏は、就任早々、HPのPC事業を継続させる方針を明らかにした。同氏は、PC事業が長期的な顧客関係を築くための重要な要素だとみている。HPが泥沼を脱出するため、新しいCEOに大きな期待が寄せられているが、その道のりはとても長く厳しい。

著作権保護法案「Stop Online Piracy Act(SOPA)」

10月に米議会下院で提出された著作権保護法案「Stop Online Piracy Act(SOPA)」が、大きな議論を呼んでいる。同法案は、著作権保持者の許可なくコンテンツを不正に流通させる行為を阻止し、著作権保持者を保護する目的で立案されたものだ。これが可決されると、米当局は、著作権違法行為を働くウェブサイトにサービスを提供するISPや検索エンジン、ネット広告提供者などに対して、サービス提供を強制的に停止させる権限を持つことになる。

SOPAに対し、ネットの自由を奪うものだとして多くの企業や団体、ユーザーが猛烈に反対している。現状の法案では、違反コンテンツをわずかでも掲載しているとして、YouTubeのような健全なサイトさえも規制の対象になりかねない。専門家の間では、同法案が成立すれば競争相手を陥れる手段として悪用する企業が出てくる可能性もある、という懸念が広がっている。 SOPAについては、2012年に最も議論される課題のひとつになるだろう。

スティーブ・ジョブス氏死去

10月5日、アップルの創設者、スティーブ・ジョブス氏が、長い闘病生活の末、この世を去った。テクノロジー業界に革新をもたらしたジョブス氏の歴史的功績を語るのは、まだ早すぎるかもしれない。マイクロソフトの創設者、ビル・ゲイツ氏と肩を並べるカリスマ的存在で、2人はハイテク界を常に牽引してきた。

ジョブス氏は、PC業界にテクノロジーと芸術をもたらした、最も優れた経営者だったかもしれない。彼の人生は、まさに「アメリカン・ドリーム」そのものであった。ジョブス氏は、共同創設者のSteve Wozniak氏と共にApple ll でPC革命を起こしたが、一度80年代にアップルを追い出されている。その後、90年代にピクサーのCEOとしてCGアニメーションに革新を与え、2001年再びアップルのCEOに返り咲き、同社を空前の成功へと導いた。CEOの座に再就任してからは、音楽業界にiPodとiTune、モバイル業界にiPhone、そしてタブレット業界にiPadを登場させ、それぞれの市場を圧巻した。

彼の経営者としての成功は、アップルが8月、エクソン・モービルを追い抜き、地球上で最も価値のある企業(時価総額面)の座に付いたことで証明された。ジョブス氏のことを気難しく専制的だという見方をする人も多いが、彼の情熱と類まれな才能は、万人の認めるところである。

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