3月6日、FBIは、ハッカーグループ「LulzSec」の幹部数人を逮捕したと発表した。グループのリーダー的存在「Sabu」ことHector Monsegur(28)が、裏でFBIの捜査に協力していたことが今回の一斉逮捕につながったようだ。
LulzSecとは、ハックティヴィスト集団「アノニマス」とつながりがあるとされるグループで、7名のコアメンバーから構成されている。Sony、AT&T、ニューズ・コーポレーションをはじめとする数々の大企業にサイバー攻撃を仕掛けたとして有名だ。同グループは、2011年6月25日から事実上活動を停止している。 (※Wikipedia(英語版)参照)
リーダーの裏切り、LulzSec壊滅
FoxNewsによると、イギリス人とアイルランド人それぞれ2人ずつ、計4人がLulzSecのメンバーとして逮捕され、別件でアメリカ人のハッカー1人が逮捕された様子。逮捕の決め手となったのは、LulzSecのリーダーSabuがFBIに流した内部情報だ。
Sabuは去年8月、FBIにより“秘密裏に逮捕”され、それ以来、当局の情報提供者として捜査に協力していたようだ。FBIからの脅迫、もしくは裏取引の提案があったものと思われる。
彼は、「FBIの犬」となってからもTwitter(@anonymouSabu)を通して、ネットユーザーにアノニマス活動への参加を促し続けていた。
約5ヵ月前、SabuはRedditで「Q&Aセッション」を開き、ユーザーたちと次のようなやり取りをしている:
Q: 「LulzSecでの活動はどんなだった?みんな逮捕されたときはどう思った?」
Sabu: 大勢の仲間を失ったよ。今後、彼らと話す機会はないだろうな
Q: 「捕まるのは怖い?」
Sabu: もう後には引けないところまで来てんだよ。別に「俺すげ―!」って言ってるわけじゃないからな。それが真実なんだよ
この時点で、すでにFBIのスパイになっていたことを考えると、なかなかの食わせ者っぷりだ。どちらのやり取りを見ても茶番劇すぎて、ただの笑い話としか思えない。
さらに、今回の一斉逮捕の前日には、ぬけぬけとこんなツイートを残している:
The federal government is run by a bunch of fucking cowards. Don’t give in to these people. Fight back. Stay strong.
— The Real Sabuさん (@anonymouSabu) 3月 5, 2012
連邦政府は、腰抜けどもが支配している。こんなやつらに従うな。反抗しろ、強く生きるんだ
アノニマスへの影響は?
容疑者の1人「Anarchaos」ことJeremy Hammandは、アノニマスのメンバーとして逮捕された。彼は、年末に起きた「Stratforハッキング事件」の首謀者だとされている。
アノニマスは去年12月、民間情報機関Stratforからクレジットカード番号などの個人情報と共に、500万件以上の電子メールを盗み出した。2月末には、盗み出したメールすべてを内部告発サイト「WikiLeaks」に手渡している。
一連の逮捕劇を受け、Twitterアカウント「@YourAnonNews」は、早々と反応。「LulzSecはずっと昔に死んでいる。アノニマスはこれからもさらに巨大になるだろう」という内容のメッセージをツイートし、今回の逮捕がアノニマスに何の影響も与えないことをアピールした。
さらに、こんなツイートも・・・
LulzSec was a group, but Anonymous is a movement. Groups come and go, ideas remain.
— Anonymousさん (@YourAnonNews) 3月 6, 2012
LulzSecは1つの“グループ”だが、アノニマスは“ムーブメント”だ。グループは絶えず入れ替わるが、“アイデア”は留まり続ける
今回の一斉逮捕についてFBIは、「LulzSecの“頭”を切り取った」とコメント。「組織(アノニマス)に壊滅的なダメージを与えた」として、作戦の成功を宣言した。
この作戦でFBIは、いわるゆ「トップ・ダウン」方式を採用して、文字通り「組織の頭からつぶしていこう」と考えたわけだが、本当にその戦略は効果的だったのか?
普通の組織が相手なら、トップ陣を根こそぎ潰してしまえば壊滅状態に追い込めるかもしれない。だがアノニマスは、普通の組織とは根本的に違う。
アノニマスとは?
そもそもアノニマスには、「リーダー」や「幹部」がいない。「正式なメンバー」という概念すら存在しない。言い換えれば、“組織”ですらないということだ。
自ら「アノニマス」を宣言するだけで、誰でも「アノニマス(Anonymous)」の一員となれる。ルールやノルマなど何もない。何かアクションを起こすときは、「共感し合う思考同士」が集まって「行動」に変わっていく。
より多くの共感を得た“思考”が、現実のオペレーションになり、政府や企業へのサイバー攻撃へと発展していく。その性質は、2chの“祭り”と非常によく似ている。
活動期間外では実体が存在せず、ハブも存在しない、それがアノニマスだ。
このことを考慮すると、今回の一斉逮捕がそれほど効果的だったとは思えない。脅し程度にはなったかもしれないが、“壊滅的ダメージ”とは到底いえないと思う。
<追記>3月8日:
各メディアによると、早速アノニマスが報復活動を開始した模様。ターゲットとなったのは、インターネット・セキュリティー会社「Panda Security」だ。同社が今回のLulzSec逮捕に協力したことが、攻撃の理由らしい。
アノニマスは、Panda securityのWebサイトを改ざんして、さらに従業員100名以上のメールアカウントとパスワードをネット上に晒したようだ。
時を同じくして、バチカン(ローマ法王庁)のWebサイトも一時アクセス不能に陥った。こちらも、アノニマスが攻撃声明を発表している。
ソース:
・http://en.wikipedia.org/wiki/LulzSec#Members_and_associates
・http://www.foxnews.com/scitech/2012/03/06/hacking-group-lulzsec-swept-up-by-law-enforcement/
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